リン酸

リン酸(リンさん、燐酸)は、リンのオキソ酸の一種で、化学式 H3PO4 の無機酸である。オルトリン酸(おるとりんさん)とも呼ばれる。リン酸骨格をもつ他の類似化合物群(ピロリン酸など)はリン酸類(リンさんるい)と呼ばれている。リン酸類に属する化合物を「リン酸」と略することがある。リン酸化物に水を反応させることで生成する。生化学の領域では、リン酸イオン溶液は無機リン酸 (Pi) と呼ばれ、ATP や DNA あるいは RNA の官能基として結合しているものを指す。

項目 標準
外観 透明無色粘着性液体
(H 3 PO 4) ≥85.0%
色合い ≤20
ヒ素はAs ≤1PPM
Feを鉄として ≤20PPM
SO4としての硫酸塩 ≤30PPM
Fとしてのフッ化物 ≤10PPM
塩化物としてCl ≤5PPM
Pbのような重金属 ≤10PPM
H3PO3としての還元物質 ≤120PPM
利用
ハロゲン化水素の調製
リン酸と無機ハロゲン化物を反応させると、対応するハロゲン化水素ガスが発生する。これは研究室レベルでハロゲン化水素を入手する簡単な方法である。
NaCl(s)+H3PO4(l) → NaH2PO4(s)+HCl(g)
NaBr(s)+H3PO4(l) → NaH2PO4(s)+HBr(g)
NaI (s)+H3PO4(l) → NaH2PO4(s)+HI (g)

皮膜処理
リン酸は錆びた鉄の表面に存在する酸化鉄を不溶性のリン酸塩へと変換し、皮膜を生成することができる。この廃液処理は環境に配慮する必要がある。

食品添加物
リン酸塩としたものが食品添加物として用いられている。リン酸塩が身体に与える影響について、様々な議論が交わされている。

肥料
リン酸は窒素、カリウムと伴に肥料の三要素であり、量的には肥料としての消費量が圧倒的に多い。リン鉱石を硫酸で処理しリン酸を可溶性とした、過リン酸石灰が最も多く生産されているが、硫酸イオンを含まずリン酸の含量の多い重過リン酸石灰も普及している。

赤外線吸収剤
赤外線を吸収する性質を利用して赤外線吸収リン酸塩ガラス、赤外線吸収フィルム用樹脂、UV カット化粧品などに用いられている。 また、この性質を利用して軍用では水和蒸気を煙幕として発生させる白リン弾や赤リン発煙弾がある。